免疫疾患横断セミナーシリーズ第6回

免疫疾患横断セミナーシリーズ第6回

日本臨床免疫学会が、会員以外の方を対象に企画したセミナーです。
学会員も参加でき、研修認定単位1単位が取得できます。


Human Immunology Priming Seminar
~領域横断的な臨床免疫の特徴を理解しよう~
2025年6月21日(土)12:00~16:50
会場: TKPガーデンシティPREMIUM東京駅丸の内中央 12F Room 12A


様々な領域の免疫疾患のエキスパートが、臨床免疫の視点で俯瞰しつつ入門レベルから解説します。
まだ専門分野を決めていない、研修医・専攻医も歓迎です。


 開催形態
ハイブリッド(会場参加・ウエブ参加のいずれも可能)
 参加費
無料(学会の単位認定料のみ有料)
 主 催
一般社団法人 日本臨床免疫学会
 ランチョン
 セミナー共催
アッヴィ合同会社
 イブニング
 セミナー共催
ファーミング



参加申込締切:6月11日(水)17:00

お問合せ先:jsci-hi@icongroup.co.jp



プログラム

12:00 - 12:50 ランチョンセミナー


「関節リウマチの基礎と臨床」

 座 長 :
保田晋助(東京科学大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学分野)
 演 者 :
駒井俊彦(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)

(共催:アッヴィ合同会社)


13:00 - 15:50 第6回免疫疾患横断セミナー


 司 会 :
藤尾圭志(東京大学大学院医学系研究科内科学 アレルギー・リウマチ学) 
松本 功(筑波大学医学医療系 膠原病リウマチアレルギー内科)


13:00-13:10 開会挨拶

 田中良哉(一般社団法人 日本臨床免疫学会 理事長)

13:10-13:45 腎臓領域「自己免疫性腎疾患における好中球の役割」

 中沢大悟(北海道大学病院 リウマチ・腎臓内科)

13:45-14:20 皮膚科領域「皮膚免疫応答の生体イメージング」

 江川形平(鹿児島大学皮膚科)

14:20-14:30 休憩

14:30-15:05 神経領域「臨床免疫から紐解く神経免疫疾患の多彩な病態」

 三宅幸子(順天堂大学大学院医学研究科 免疫学)

15:05-15:40 irAE領域 「免疫関連有害事象 ―臨床免疫学の新地平ー」

 村上孝作(京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター・がん免疫治療臨床免疫学部門)

15:40-15:50 閉会挨拶



16:00 - 16:50 イブニングセミナー


「PI3Kδ関連先天性免疫異常症」

 座 長:森尾友宏(東京科学大学 高等研究府 免疫・分子医学研究室)
 演 者:森谷邦彦 先生(防衛医科大学校 小児科)
(共催:ファーミング)



講師紹介


中沢大悟

中沢 大悟

北海道大学病院
リウマチ・腎臓内科

腎臓は異物を含む老廃物の排泄を担う臓器で、その構造的特徴から、糸球体における免疫複合体の沈着や補体活性化を契機とした免疫応答が、自己免疫疾患の病態に関与する。糸球体では、大量の血漿が血管内皮細胞、基底膜、ポドサイトのスリットダイアフラムを通過し、老廃物を排泄しつつ必要な成分を保持する。しかし、自己免疫疾患や代謝性疾患によりこの精緻な制御が破綻すると、免疫複合体の沈着や代謝産物の蓄積が引き金となり、メサンギウム細胞を含む糸球体構成細胞や免疫細胞が過剰に活性化し、腎障害を助長する。好中球は骨髄から抹消循環に出た後、炎症がなければ血管内を循環し、最終的に網内系で除去される。しかし、ANCA関連血管炎やSLEでは、好中球が異常に活性化され、NETs形成や補体の関与により血管内炎症を引き起こす。このような好中球の異常な活性化は、糸球体の基底膜の損傷し、メサンギウム細胞の異常活性化と連動して腎障害を助長する。本セミナーでは、腎臓の構造的および免疫学的特性に焦点を当て、特に好中球とのクロストークがもたらす腎障害の病態について考察し、この分野の魅力をお伝えできればと思います。

江川形平

江川 形平

鹿児島大学皮膚科

皮膚は外界と接する第一線の防御器官であり、そこでは多彩な免疫応答が繰り広げられています。本セミナーでは、生体イメージングによって観察される、皮膚の中でダイナミックに動き回る免疫細胞たちの様子を紹介したいと思います。ランゲルハンス細胞、T細胞、樹状細胞、好中球といった様々な免疫細胞たちが実際にどのように動き回っているかを観察することで、それぞれの細胞の性格(?)をイメージしていただけたらと思います。また、それらの細胞が相互に協力し合っていかに外来抗原を排除し、我々の体の恒常性を維持しているかを知ることで、免疫に対する親しみを感じ、免疫学研究に興味を持っていただけたら、と思っています。

三宅幸子

三宅 幸子

順天堂大学大学院医学研究科
免疫学

神経領域の免疫疾患においては、近年様々な分子標的薬が登場しています。自己免疫疾患で共通に使用される薬剤から、疾患に比較的特徴的な薬剤まで多彩です。基礎研究から開発された薬剤が臨床で使用されることにより、各疾患では標的とする免疫コンポーネントが異なることが実証され、そこから病態の理解が深まっています。これらの薬剤を使いこなすためには、臨床免疫学の知識は欠かせません。治療薬開発が盛んに行われている、多発性硬化症・視神経脊髄炎・重症筋無力症といった代表的な神経免疫疾患について、基礎研究と治療薬の有効性から病態を考え、明日からの臨床に活かしましょう!

村上孝作

村上 孝作

京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター
がん免疫治療臨床免疫学部門

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が普及した現在、がん免疫療法を受ける患者数が増加しています。しかし、それに伴い免疫関連有害事象(irAE)が新たな臨床課題として浮上しています。例えばICIによる関節炎は生活の質を損ない、がん治療の継続を妨げることがあります。私はリウマチ専門医の観点からirAEの発症メカニズムを解明し、抗腫瘍免疫を維持しながら免疫・炎症を制御する方法の開発に取り組んでいます。
炎症・免疫疾患を専門にする皆さんだけでなく、がん免疫治療に日々関わっている皆さんにも是非「臨床免疫学」という学際的で挑戦的な分野に興味を持っていただきたいと思います。私たちとともに、この新しい課題に取り組み、患者さんの未来を切り拓く力になりましょう。

共催セミナー抄録:ランチョンセミナー


駒井 俊彦

東京大学医学部附属病院アレルギー
リウマチ内科

関節リウマチの基礎と臨床
関節リウマチ(RA)は、免疫系の異常を背景に持続的な滑膜の炎症を生じ、関節の腫脹や疼痛、関節破壊や機能障害をきたす自己免疫疾患です。標的特異的な抗リウマチ薬の登場によりRAの治療成績は飛躍的に向上しました。特にJAK阻害薬は、RAの病態に関与する複数のサイトカインのシグナル伝達を抑制することにより、その有効性が確認され、治療の選択肢として期待されています。しかし、依然として多剤の抗リウマチ薬に治療抵抗性を示す患者の存在や、薬剤の有害事象、併存疾患への配慮を含めたリスク管理が課題となっています。これらの課題に対応するためには、RAの免疫病態を詳細に評価し、患者ごとの適切な治療戦略を立案することが重要です。RAの診断・治療戦略に加え、免疫学的背景および免疫担当細胞プロファイルの解析を通じて、個別化医療への展望とその実現に向けた最新のアプローチを概説します。


共催セミナー抄録:イブニングセミナー


森谷 邦彦

防衛医科大学校
小児科

PI3Kδ関連先天性免疫異常症

生体における免疫機能では、免疫細胞が自己と非自己を識別して、非自己である(ウイルスや細菌などの)外敵を排除しています。この機能には多くの免疫細胞が固有の役割を担っていますが、細胞の機能に関わる遺伝子に変異があると免疫不全状態が発生する場合があります。特に原発性(すなわち遺伝性)の免疫不全症が先天性免疫異常症と呼ばれており、これまでに約550の原因遺伝子が報告されています。これらの遺伝子変異によって、免疫細胞間の情報伝達や免疫細胞内へのシグナルの伝達などに障害が生じるメカニズムが明らかになりつつありますが、本セミナーでは後者(シグナル伝達)の障害のうち、代表的なシグナル伝達経路であるPI3Kδ経路-NF-κB経路に関連して発症する疾患について、私自身の研究留学、そしてその研究から得られた成果を交えてお話ししたいと思います。